雑誌Forbesの中で面白いページを見つけました。医療が進化し続けている中で、将来、いつまで、私たちは私達を「人間」と呼べるのか、「死」という概念は無くなるのか、「人間性」とは、そして、人工心臓の登場により、自然死と人工的な死の境界線は?などのトピックが着目されています。

「アイデンティティ」

心臓のない人間は生きているのか。人工心臓に心は宿ることがあるのか。心臓は人間にとって数ある臓器の中でも最も特別なものである。なぜなら心臓の鼓動の停止を”死”として定義してきたからだ。しかし、人工心臓が手軽に使える治療手段となり、命に関わる機能を代行できるようになれば、これまでの死の概念は覆される。その時、人間は新しい死の定義を探さなければならない。さらに、終末期には、患者による人工心臓の停止は自殺かという問題が顕在化する。人工心臓はただの機械か、それとも体の一部なのか。問われるのは、人間とテクノロジーとの心理的な距離。

「魂」 

脳の複製データは人間の心か。マインド・アップローディング(脳内情報の転送)とは、人の脳の構造を高性能の電子顕微鏡でスキャン後、デジタルデータに落とし込む医療テクノロジー。もし、人の知性や個性を複製し、ロボットに心として移植できれば、人類に永遠の生命を預けらるとの期待もある。問われるのは、デジタルデータとして複製された、ある人の脳の構造を、本人としてみなせるのかという問題だ。複製データは、まるで死んでいないかのように、人としての意識を持ち続けられるのか?こうした問いは、過去何世紀にも渡って議論されてきた、心と脳は分けられるか?という哲学的問題に帰結する。皮肉にも、この未解決問題は、マインド・アップローディングを試し、実際に分けてみなければ解明できないと言われている。

「スーパーヒューマン」

人体強化の超人。能力拡張の先にあるものとは。医療テクノロジーは人体の限られた能力を拡張する可能性に満ちている。コンピュータ制御式の脳神経インプラントを使えば、神経細胞の活動パターンを検出し、心で念ずるだけで、外部のマシンを動かすことができる。さらに、感情をコントロールする研究も進行中。恐怖などの特定の感情に関するニューロンの活動を遮断する脳領域を刺激するという。賢明に使えば、四肢を切断した人の日常生活の補助や、うつ病や依存症などの精神疾患の治療が行える。だが一歩間違えれば、武器を遠隔で自由自在に操り、死を恐れずに敵に挑む人間兵器を生み出してしまう可能性すらある。テクノロジー自体に罪はない。問われるのは、人間の能力を拡張する側の”倫理”なのだ。

「アンチエイジング」

永遠の若さを求めて。老化は病気か。遺伝子操作や幹細胞療法といった抗老化治療の発展で、美と健康を追求するアンチエイジングの意味は激変する。自然な老化を選ぶことは、周囲から異常であると判断されかねない。医療テクノロジーは、寿命を延ばす治療を選ばない権利が保証された時初めて、真に人を解放する。