腸は、第二の脳か否か、様々な研究がおこなわれています。生物に最初に備わった臓器は、脳や心臓でもなく腸と言われています。クラゲやイソギンチャクのような腔腸動物には、脳はなく、腸が脳の役割を担っています。現在に至るまで、大きな病気を経験したこともなく、臓器の機能を理解せずに生きてきました。

周りで多くの方が、便秘で悩んでいるのを耳にし、何かお役に立てないかと思いながら、書物をあさりました。思い浮かんだのが、シンプルに「腸は何か?」への理解に繋がる知識です。私自身、緊張したり、旅先などで、便秘に苦しんだ経験があります。部分的ではございますが、インスタグラムで腸にアプローチするエクササイズを紹介しています。

東京医科歯科大学名誉教授、藤田絋一郎教授の書『脳はばか、腸は賢い』から、腸について、わかりやすい文章をいくつかご紹介させて頂きます。

“脳は、食べ物が安全かは判断できませんが、腸にはそれが出来ます。食中毒菌が混入した食べ物でも、脳は食べなさいというシグナルを出します。しかし、腸は菌が混入すると、激しい拒絶反応を示します。人間の身体を中毒させないように、腸が判断し反応を起こしています。

人間は、脳死したとしても、腸の生命は終わりにはなりません。腸は独立して機能し続ける事ができるのです。しかし、腸が完全に死んでしまうと、脳の働きも完全に停止してしまいます。また、腸は消化の目的だけで働くという一般的な考え方がありますが、実際は人間の感情や気持ちを決定する物質はほとんど、脳ではなく、腸で作られています。腸の中で食べ物から、人間の幸せと愛情をもたらすセロトニンやドーパミンを合成しています。

全身麻酔をかけた手術後に、医師が一番気にするのが、腸の働きです。腸が動いているとわかると医師はホッとします。腸は、病原菌を排除し、人間が生きるために必要なビタミン類を合成し、免疫力を作り、幸せ物質であるセロトニンやドーパミンの前駆体を脳に運ぶという、私達が生きるために重要な作用を担っているのです。”

抗うつ剤としても知られ、身体の調子を整える神経伝達物質セロトニンの、おおよそ90%が腸に存在し、脳や他の身体の各臓器へと運ばれています。腸には一億もの脳細胞が存在し、食道から肛門までに続く9m間には、脊髄や抹消神経系より多い※ニューロンが存在するといわれています。(※ニューロンとは、生物の脳を構成する神経細胞のこと。ウィキペディア)。 消化や排泄の絶対的な機能を遂行し、脳からの司令なしで独自の神経系を持つ唯一の器官ともいえます。脳内細胞が存在するだけでなく、身体の免疫力の70%も腸内で作られています。腸関連リンパ組織といい、外部からの侵入者を撃退する上で大きな役割を果たします。また、腸内には、脳と同じ麻薬受容体があるため、悪い習慣があると、脳と同じように依存症になってしまう可能性があります。不安や緊張は、腸内細胞のバランスを乱すなど、腸内細菌は、脳の発達や行動にまで影響を及ぼします。

1976年、NASAのホールデマン博士が、宇宙飛行士と腸内細菌の関係を調査した際、極度の不安を緊張にさらされている宇宙飛行士は、悪玉菌といわれるバクテロイデス菌が異常に増加している事が実証されました。また、阪神・淡路大震災前後での被災者の腸内細菌からは、震災後にカンジダやシュードモナス菌が増加している事が証明されています。心理的あるいは身体的ストレスが、善玉菌を減らし、悪玉菌を増やしたのです。

著者が、丹田呼吸=腸を意識して呼吸することで、結果、頭で考えずに腸をとおして、自分と向き合う事になり、感性が磨かれると述べられている点も、個人的にとても興味深い視点でした。実際、自分の周りでも、歳を重ねるにあたり、精神がいつまでも若く生き生きしている方の多くは、丹田呼吸の大切さを唱えていらっしゃる方や、深い呼吸の方に多く見られるような気がいたします。最後に、著者ご自身が、実践されている『腸が喜ぶ生活習慣』の中で、糖質、食品添加物、化学調味料を控える事や発酵食品を積極的にとる事以外で、特に印象に残ったのが、以下の習慣です。

  • 色のついた野菜や果物を楽しむ
  • フランス料理やイタリア料理を月に一回楽しむ
  • 一緒にいて居心地のいい人とゆっくり、食事を楽しむ
  • お酒は気の合う人と一日二合まで
  • おいしい水を味わう
  • 恋をする
  • バカになる 
  • 沢山大笑いする
  • 好奇心を持って、多様性を認める
  • お風呂にゆっくり浸かって、身体を温める

皆様の『腸』という臓器への意識や認識のお役に立てれば幸いです。 

 

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